これは岩田母型によるベントン活字である。岩田母型製造所(現イワタ)は大正9年創業の活字専業メーカーで,一時は月産約20万個の母型を製造していた。
データは蔦友印刷『活字綜輯』(平成9年版)から一部を転載したものであるが,活字の(馬の)分類と排列がよくわかる。ここでは大出張から泥棒までを示した。 蔦友印刷は平成15年に新社屋への移転と同時に撤退するまで活字に強い情熱を持ち,長く活版に取り組んできた印刷会社である。
以下に,馬の排列(右図参照)に基づいて全文字字形を掲げる。画像をクリックすると拡大表示される。
以下に,馬の排列(右図参照)に基づいて全文字字形を掲げる。画像をクリックすると拡大表示される。 精興社は大正2年に東京活版所として発足し,昭和2年に精興社と社名を改めたのを機に母型製作を行うようになった。創業者白井赫太郎の求めに応じて君塚樹石が,従来の主流であった築地書体,秀英書体とは趣を異にした精興社タイプとして種字を彫刻したことは有名である。
爾来,岩波書店などを中心として多くの書籍組版に使用され,その品位は第一級のものとの評価を得た。
データは同社発行の『和文活字-組版・印刷への手引-』(昭和41年 非売品)から一部を転載したが,これは昭和27年から作製が開始されたベントン活字である。一つのサンプル文章に明朝・ゴシックが混植されているので,そのまま示した。
邦文写真植字機の発明は大正13年である。この年,石井茂吉(現写研創業者)・森沢信夫(現モリサワ創業者)によって特許出願されたのがこの年であった。 写研の前身「写真植字機研究所」は大正15年に創業,爾来,写植機(現在はコンピュータ写植),写植用文字盤およびフォントの製造専業メーカーとして歩んできた。ただ,手動写植機の時代は終わり,また写研のフォントはオープンなフォーマットとしては提供されず,写研製のシステムでのみ使用可能な独自フォーマットとなっている。そのため,石井明朝体は一世を風靡した書体であるが,将来にわたっての利用には不安がある。 石井明朝体は,基本は石井茂吉がデザインしたもので,最初の明朝体(後に石井中明朝と呼ばれる)が完成したのは昭和8年である。その後,昭和26年に石井細明朝,昭和34年に石畏怖と明朝が完成し,基本ファミリーができあがった。 とくに石意中明朝オールド仮名(MM-OKL)に対してはデザイナの評価は高く,ファンが多い。
本蘭明朝は,活字書体の雰囲気と石井明朝のよさを兼ね備え,写植機の機能に合う書体として新しいコンセプトでデザインされ,昭和50年に発表された明朝体である。写植+オフセット印刷による版面が,活字の印圧によるマージナルゾーンを持たないために,やや弱々しく感じられる欠点を補うデザインがなされている。
モリサワを代表する明朝体、リュウミンは1960年代から開発が始まった。 独自の本文用明朝体を望む声は社内外ともに大きく、モリサワは新しい明朝体の開発に着手したが、この明朝体の原型になったのが、活字メーカーの森川龍文堂(もりかわりょうぶんどう)から譲り受けていた書体、新體明朝である。 森川龍文堂は1902年(明治35年)に大阪で創業された会社で、金属活字鋳造と印刷機器販売を営んでいた。 森川龍文堂は金属活字鋳造を行うとともに、種字彫刻師を招いてオリジナルの活字母型も作っていたが、その1つが戦前に定評のあった新體明朝のシリーズであった。 この新體明朝の見本帳にある四号サイズ(約14ポイント)のやや細身の明朝体活字が、モリサワの新しい本文用明朝体のモデルになった。新しい書体の名称は、森川龍文堂の「龍」と明朝体の「明」から、なじみやすく「リュウミン」とされた。 最初に完成したウエイトであるリュウミンLは、1989年に最初の日本語PostScriptプリンタに搭載され、DTPの先がけにもなった。現在も文字セットの拡張に対応して文字数を増やすなど、使い勝手の充実が進められており、リュウミンファミリーは時代とともに歩んでいる書体といえる。 現在は、LからUまでの8種類のウェイトをもったファミリーが提供されている。 なお,この解説はモリサワのホームページから,その一部を引用してまとめたものである。
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「本明朝」は,しなやかなカーブとキレのある直線を調和させた,可読性の良い本格派の本文用明朝体です。 写植の時代から力強くいきてきた「本明朝」は,近代的な明るさのなかに,よき伝統を継承する毅然とした表情を持ち、ひとつひとつの文字の造形美を考慮してデザインしています。 ウェイトは,L,M,B,E,Uの5種類が揃い,本文組みから見出しまで使用できます。 また,本明朝の流れを踏襲し,判別性と可読性を重視して,適度な黒みと安定感のある書籍専用書体として開発した,「本明朝-Book」も用意しています。「本明朝-Book」は,本明朝-Lと本明朝-Mの中間的なウェイトとし,各エレメントは活字本来の柔軟性の再現のため、アナログ的な要素を取り入れました。 11Qから16Q(8 pt.から12 pt.)の書籍や雑誌の本文での使用を想定して、仮名や句読点,括弧などの約物の位置や大きさを調整しました。 さらに,本明朝-Bookの濃度とボディサイズに合わせて調整した,Venetian,Garamond,Baskerville,Bodoniの4種16書体の欧文書体も揃えました。 そして,ウェイトL,M,Bookには,「標準がな」「小がな」および築地系の柔らかな雰囲気を持った「新がな」「新小がな」の4種類の仮名を標準装備しました。また,OpenTypeフォントでは,ウェイトB,E,Uには「標準がな」「新がな」の2種類の仮名を標準装備しました。本文組みや見出しにいろいろな表情を持たせることができます。
【注】以上,本明朝-Mの書体イメージと解説はリョービイマジクス株式会社のご好意により提供していただいたものである。
明治時代につくられた年賀用活字である。さまざまな装飾書体がつくられていた。『真性活字中毒者読本』(柏書房刊)より転載させていただいた。
これは岩田母型によるベントン活字である。
戦前の文部省が定めたもので,国定教科書に用いられた。江守賢治著『解説字体辞典』(平凡社)より最初の5ページを転載させていただいた。